在宅復帰希望 療養環境に課題
介護保険申請、サービス活用 福祉用具 自立の助け
右足の痛みで救急外来を受診した女性Gさん(91)は「閉塞性動脈硬化症」と診断され、入院となりました。普通の人ならだいぶ前から我慢できない痛みだったはずですが、50代の三男と2人暮らしで今も家事全般をこなす気丈な性格でもあり、ずっと耐えていたのでしょう。
三男は主治医から、右足大腿部切断の恐れがあるとの説明を受けました。そのため術後の暮らしと療養に掛かる費用負担が心配になり、すぐに病院内の相談室を訪問。担当の医療ソーシャルワーカー(MSW)から、仮に切断した場合は身体障害者手帳の申請、さらにリハビリ後の回復状況により介護保険の申請ができると助言されました。
結局、Gさんは右足を切断しましたがショックからなかなかリハビリに取り組めず、他人との関わりも避けるようになりました。MSWは病室へ度々通ってGさんの昔話を聞くことから信頼関係を築き、ショックが少し和らいできたところでリハビリを促し、退院に向けた会話も始めました。
本人は長年住み慣れた自宅に帰る意思を固めていました。一方、勤めのある三男は、日中独居を危ぶんで施設入所も一時考えましたが「ここまで育ててもらった恩返し。母の望む暮らしができるよう私ができるだけ看ます」と同意しました。
退院に向けた目標は、自分で排せつができるようになること。Gさんは早く自宅へ帰りたいとの思いから、リハビリにも励むようになりました。
MSWの助言で身体障害者手帳と同時に介護保険(要介護認定)を新規申請。Gさんは要介護2と認定されました。その後、ケアマネージャーに依頼しケアプランを作成。福祉用具の購入とレンタルを希望しました。
退院前には、ケアマネらと生活環境を確認しました。居室内に置くポータブルトイレと、長男の介助を受ける入浴用のいすや浴槽用手すりの購入を決めました。費用の9割は保険から支給され自己負担は1割となります。
背部や脚部の角度を調整できるベッドや車いす、自宅内の段差を解消するスロープはレンタルすることにしました。要介護度別に支給限度額が決まっていますが、この負担額も1割です。
退院後Gさんは自力でベッドを下り、車いすを使ったり、両腕の力ではったりしながら屋内を比較的自由に移動しています。認知機能が若干低下したこともあり調理は控えていますが、飼っている小動物への餌やりや簡単な掃除などできる家事を見つけて励んでいます。
ささえ~る+アドバイザー
岩淵英理さん
(豊栄病院 医療ソーシャルワーカー)
介護保険利用するには
治療後速やかに認定申請
Gさんのように自立していた人が病気になって入院し、退院後の日常生活に不自由がある場合は介護保険サービスの利用が可能です。費用面の負担が軽くなりますから、治療後速やかに要介護(要支援)認定を申請しましょう。
訪問調査と主治医意見書による1次判定、専門家が集まる介護認定審査会による2次判定を経て最終判定されます。認定に応じて介護(介護予防)サービス計画書「ケアプラン」を作成してもらい、サービスを利用します。
病院には医療ソーシャルワーカーが常駐する医療相談室や地域連携室があり、退院後の暮らし方を含めてさまざまな悩み事に応じています。入院したら早めに訪ねてみてください。
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