症状進行し眠れず疲労たまる
ショートステイ利用納得
若い頃から仲が良いと評判のNさん(83)と妻(78)は2人暮らし。Nさんは責任感が強く、周囲の人望もあります。
Nさんが妻の行動に異変を感じたのは1年半ほど前でした。もの忘れがたびたび見られるからと認知症専門医のいる病院に連れて行くと、やはり認知症との診断。記憶障害と判断能力の低下に加え、実は幻覚や失禁もあったとNさんが告げ、確認されたのでした。
次いで申請した要介護認定では要介護3とされ、介護保険サービスの利用を始めました。ただ、「人前に出たくない」という妻の気持ちと、「介護になるべく他人の手を借りたくない」というNさんの強い意向がありました。そのためデイサービスは利用せず、訪問介護だけの利用にとどめました。
数カ月後、ヘルパーが訪ねるとNさんが疲れきった表情でいました。聞けばここしばらく、妻が深夜に掃除を始めたり、夜明け前に散歩に行くと言い出したりして、ゆっくり眠ることができないとのこと。認知症の症状が進んだようです。Nさんは「自分が妻の介護を頑張る」と言い張りますが、疲労の色は隠せません。体調を崩すのは時間の問題でした。
Nさんの隣で、心配そうに顔をのぞき込む妻。Nさんは妻の表情を見て、ケアマネージャーから提案されたショートステイの利用を決心しました。2~3泊施設に滞在して入浴や食事などの介助してもらい、介護者の負担も軽くする介護保険サービスの一つです。当初不安がっていた妻も何度か利用するうちに、落ち着きました。
「熟睡できるのがなにより。夜中の物音に神経をとがらせる必要もないし体が楽になった」とNさん。「実はささいな失敗をした妻を怒鳴りつけることが増え、そんな自分が嫌になっていた」と打ち明けました。
他人の世話を受けることを潔しとしない高齢者もいますが、介護の専門家の手を借りることは全く恥ずかしいことではありません。Nさんは「やはり精神的にも疲れていた。あのままでは夫婦共倒れだったかも」と自戒を込め振り返りました。
ささえ~る+アドバイザー
角屋宗敬さん
(在宅介護支援センター堀之内 管理者)
介護者のストレス
専門職と連携し気分転換
要介護状態の人が自宅で暮らしを続ける際の重要な要素の一つに、介護する人の健康があります。介護は体への負担ももちろん、気遣いや配慮などによる精神的なストレスが、介護者自身気付かないうちにたまっていることが多いのです。
本人と介護者の良好な関係は安定した在宅生活を続ける基盤です。介護とストレスを1人で抱え込まず、専門職とチームになって本人を支えましょう。各種サービスを上手に利用することで、互いにリフレッシュすることもできます。
なお、ショートステイでは、所得等に応じて食費や滞在費(部屋代等)が軽減される制度もあります。
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