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担い手たずねて

〈第29回〉「在宅ケアクリニック川岸町」(新潟市中央区川岸町)

新潟日報

2019年3月2日



みとりの時も「その人らしく」

「その後皆様お元気にしていらっしゃいますか」―。「在宅ケアクリニック川岸町」(新潟市中央区川岸町)の塚田裕子院長(55)は、訪問診療の合間を縫い、一周忌を迎えた患者遺族に便りをつづる。療養生活を振り返り、遺族の心身を気遣いながら丁寧に、はがきにしたためていく。
 在宅療養支援診療所として2009年に開所。看護師の鳴海雅子さん(39)とともに患者宅を訪れ、痛みを緩和する薬の処方、点滴など必要な処置を行う。「実は話をする時間が一番長い。本人、家族が話したいことが、本当はたくさんあることを感じます」
 塚田院長は呼吸器内科医として、市内の病院で13年間勤務した。病院では安全性と効率性を重視し、症状が進むにつれて体につなぐ管の数が増えていく。人となりに関係なく、同じ処置をせざるを得ない状況への違和感と、訪問診療の担い手不足から、最終的に自ら開院した。「その人らしく過ごせるのが自宅。『らしく』というのは、いつトイレに行くか、いつ何を食べるかといった、身近なことです」
 塚田院長が担当し、91歳の母を看取った市内の女性(68)は、「母へ毎日、励ましの言葉を掛けました。夫が手入れした庭を見ながら、食事もしっかり食べて、半年長く生きてくれました」と振り返る。亡くなる2日前まで食事を取り、入浴サービスを受けた。部屋を見回し、娘の手をにぎり、笑っているような穏やかな表情で亡くなったという。「塚田先生、看護師さん、ケアマネジャーさんの連携がすばらしかった。家で母をみとれて、本当に良かった」と話す。
 一昨年に71歳の夫を見送った女性(69)は、病院から家に帰って「あー、落ち着いた」と言った夫の声が印象に残る。深夜、たんの吸引を嫌がる夫の気持ちが変わるまで、40分間じっと待っていた塚田院長の姿も忘れられない。孫の誕生日を祝ったり、お盆に家族で集まったり、良い思い出ができたのも家にいたからこそ。「痛みを緩和するにしても、先生はいくつもの手段を持っていて、的確な診察をしてもらいました」と感謝している。
 24時間態勢で診療に当たる塚田院長。「解放される時間は少ないが、自分が必要とされていることは、人として幸せ」。クリニックは塚田院長はじめ、相談員、看護師、医療事務スタッフの4人だが、「在宅」の灯火をともし続けていく。(おわり)





在宅ケアクリニック川岸町
塚田裕子院長




医療従事者に広めたい

 家にいることは、それだけで患者さんのエネルギーになっていると感じます。在宅で療養するという選択肢があることを、病院で医療に携わる人に広く知ってほしいと思います。各機関で連携し、独居の人でも自宅で療養することができます。今は仲間をもっと増やせたらと願い、学生や研修医の実習も積極的に受け入れています。

 誤解を受けやすい点ですが、在宅診療を受けている場合は、家で亡くなった際、警察に連絡する必要はありません。静かに、穏やかにお別れをするひとときであってほしいと思います。

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