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認知症の進行を遅らせるために必要なこと

[第5回]

医療法人 新成医会 総合リハビリテーションセンター・みどり病院 認知症疾患医療センター長 成瀬 聡 院長

2016年2月15日

■薬による治療

アルツハイマー型認知症の薬は、症状の進行を遅らせるためにある

日本で認可されている薬は今、4種類だけです。治療が始まると、症状に合わせて使い分けていきます。いずれも、認知症を完全に治すことはできませんが、症状の進行を遅らせることができます。主な薬でもあるコリンエステラーゼ阻害剤は3種類あり、それぞれ併用できません。どれか一つを、症状を見ながら選択することになります。もう1種類、グルタミン酸NMDA受容体拮抗薬に分類されるメマンチンという薬があります。メマンチンはコリンエステラーゼ阻害剤と併用できます。薬にはいろいろな剤形があり、飲みやすさや、継続して服用できるかなど、症状や状態を見ながら総合的な見解で処方していきます。頭に入れておきたいこととして、薬にはいろいろな副作用が出ることもあります。例えば、コリンエステラーゼ阻害剤。傾向として、気持ちが沈んでいる症状の人が元気になる薬ですが、元気になりすぎて感情的に、怒ってしまうこともあります。怒りっぽい症状が出ている人にはメマンチンの方が適しています。メマンチンには傾眠傾向やめまいの副作用がありますので、服用したあとは注意が必要です。
※コリンエステラーゼ阻害剤…副交感神経を興奮させる薬剤の一種。


諦めずに飲み続けることで未来が明るくなっていく

薬の服用は根本治療ではなく、対症療法です。飲まないより飲んだ方が症状悪化を先送りできます。効果としては、症状の進行を緩める程度ですから、なかなか実感できないと思います。しかし、半年から一年続けるている人を見ると、飲んだ方が症状の進行が遅い、という結果が出ています。また、人によって薬の効き方が異なりますから、どの薬からスタートした方がいいのか、というものはありません。まずは3カ月くらい内服してみて、効果を検査して薬の処方を変えていくことになります。最初はコリンエステラーゼ阻害剤の3種類から始め、なかなか効果が出なくなっている時に、メマンチンを処方することが多いです。


飲み始めるタイミングはいつなのか

アルツハイマー型認知症の薬をいつから飲み始めるか、医師によって判断は異なります。残念ながら、早く飲んで軽度認知障害から認知症に移行するのを予防できる、というデータはありません。主治医とよく相談するとよいでしょう。認知症と診断された場合にはできるだけ早期に服用するとよいと思われます。



脳内に蓄積する2種類のタンパク質

アルツハイマー型認知症は、発症する20年前以上から、脳内に作られるアミロイドタンパク質とタウタンパク質の蓄積が原因であることが分かっています。現代医療では、このタンパク質をいかに作らせないか、いかに蓄積させるスピードを遅らせるかという研究がされています。現在、脳のアミロイドタンパクは、アミロイドPETという機械を使えば蓄積しているかどうかが分かります。しかし、この検査をできる施設は日本全国でも少数で、しかも保険適応になっていないので、現実的ではありません。血液検査で脳のアミロイド蓄積の有無を判定でする方法をいろいろな研究施設で開発中ですが、一般の診断に使用できるようになるのはまだ先になりそうです。



<薬の説明>

ドネペジル(商品名:アリセプト)

1999年から日本で出ている薬です。分類としてはコリンエステラーゼ阻害剤。軽症から重症まで幅広く、アルツハイマー型認知症に使われています。もう10数年たっていますから特許も切れ、後発品がさまざま出ています。治療に対しては一番スタンダードな薬です。2015年からレビー小体型認知症にも適応されています。

ガランタミン(商品名:レミニール)

こちらも分類としてはコリンエステラーゼ阻害剤です。効果としては、アリセプトと似ています。アルツハイマー型認知症の軽度、中等度の症状に適応されています。アリセプトに比べて興奮症状がでることが少ないといわれています。1日2回の内服が必要です。
※他の薬剤は1回

リバスチグミン(商品名:リバスタッチ、イクセロン)

パッチ剤、貼り薬になります。リバスタッチ、イクセロン、同じ成分ですがそれぞれ会社が異なり、商品名がふたつあります。こちらも、アルツハイマー型認知症の軽度、中等度の症状に適応されています。認知症の薬の中で唯一の貼り薬ですから、薬を飲むという行為に抵抗がある方には気持ちが楽かもしれません。分類としてはコリンエステラーゼ阻害剤です。

メマンチン(商品名:メマリー)

中等、重症アルツハイマー型認知症に適応されている薬です。コリンエステラーゼ阻害剤と異なる分類で、グルタミン酸の放出の抑制をします。コリンエステラーゼ阻害剤と併用することができます。



■ケア・リハビリによる進行遅延

気になり始めたら意識的に、積極的にリハビリをする

週3回以上30分ほどの軽い運動、有酸素運動、例えばウオーキングや体操などを行うことをおすすめします。ただ運動をするだけでも対策にはなりますが、頭の中で計算をしたり、しりとりをしたり、考えごとをしたり、運動+ひとつのタスクがあるといいですね。また、認知症が心配になってきたな、と思ったら「習慣」として取り組まれてはいかがでしょうか。食生活においてもバランスよく、肉よりは魚、穀物、豆類をとることが望ましいです。栄養面にも配慮しておきたいですね。症状が軽度でしたら、生活習慣と薬を併用すると、もっと進行を遅らせることができるかもしれませんね。



認知症を受け入れて、向き合っていく地域づくり

認知症が進んでしまうと、本人としてはなかなかそれを認められなくなります。もの忘れが多くなったな、と思ったらまずは診断を受けて自分の状態をチェックしましょう。認知症の早期発見は非常に大事です。家族は認知症のケアについて知っておく必要があります。認知症は周囲の接し方がよいと、あまり暴言・暴力・徘徊はでません。これが認知症進行予防にもつながります。認知症の人に対する差別感が今の社会にはまだまだありますが、すべての人が認知症を正しく理解し、地域で認知症の人や家族を見守る、そういう社会になっていく必要があります。また、高齢で認知症になっていくと、地域との関わり合いが少なくなる傾向にあります。デイサービス・デイケアをうまく利用し、適度な外出と人とのコミュニケーションを絶やさないようにする工夫が重要です。

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