医療・介護・健康領域の専門家によるウェルネス応援サイト【新潟日報|ささえ〜る

認知症と多職種連携の必要性

[第6回]

医療法人 新成医会 総合リハビリテーションセンター・みどり病院 認知症疾患医療センター長 成瀬 聡 院長

2016年4月1日

■認知症と多職種連携の大切な関係

認知症には多職種連携が不可欠

認知症というのは、様々な病気の中でも多職種連携が必要な疾患です。絶えず、多職種連携を意識しながら治療を進めることが必要です。

数年前までは、医療側(医師、看護師、歯科医などの医療に携わる側)と介護側(介護施設、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどの介護に携わる側)に壁があり、なかなか連携が取られていませんでした。医師は忙しくしていますし、介護側が聞きたことがあっても聞きにくい環境がありました。医師に対する敷居が高かったと言いましょうか、これが一番の問題でもありました。しかし、最近ではこの状況が変化してきて、医師たちは認知症の治療には介護側と連携、すなわち多職種連携が必要であるという意識が出てきました。認知症は医者だけでは見ていけませんし、介護側だけで見ていくこともできません。医療側と介護側の壁はだんだんと壁が低くなり、連携が取られてきています。また最近では訪問薬剤師や精神科医、摂食嚥下障害の関係で歯科医師とも連携が広がっています。



多職種連携において患者の情報をどう共有するか

薬の服用は根本治療ではなく、対症療法です。飲まないより飲んだ方が症状悪化を先送りできます。効果としては、各市町村によって様式は異なりますが、新潟市では「むすびあい手帳」というものを使って情報共有をしています。介護保険を申請して要支援認定された方に発行されるものです。この中に「情報共有連絡票」というシートがあり、すべての職種の人たちが患者の状況に対して記入をしていきます。この手帳を見れば、医療側で起きていること、介護側で起きていることも分かり、治療と対策に役立ちます。全国的に見ても、こういった取り組みは広がっています。書き込むことが必要ですから、なかなか医療側も介護側も忙しくて手を付けられない、ということがあるかもしれませんが、積極的に書いていただいて情報共有・連携を取っていただくように促しています。

現在新潟市では、この手帳に書かれていることをIT化しています。手帳を持ち歩かなくてもリアルタイムで情報が分かりますし、自分のいい時間で見て記入ができますので、医療側も介護側も非常に便利で使いやすくなると思います。これから写真や動画も共有できるように改良される予定で、認知症に限ったことではなく在宅介護という側面においても治療に大変役立つだろうと思っています。



IT化と同時に必要な“顔が見える関係”づくり

IT化が進む一方、顔が見える関係づくりも強化されています。定期的に行われている在宅医療ネットワークの会合では、多職種の方たちが集まり、グループワークやディスカッション、講義を聞いたり、交流を深めています。やはり会って話をすると、関係性が築かれますので、非常にいい取り組みです。医療側も、介護側も、顔見知りになって仲良くなると連携がスムーズになっていきます。また、地域全体で認知症患者を見守るには自治体や民生委員など、地域住民との連携も大切です。顔が見える関係づくりにおいて、医療、介護、地域住民との連携で何ができるのか、今後は検討していく必要性が大いにあります。



これから求められる認知症のサービスとは

訪問薬剤師の存在はこれから大切になっていくと思います。今、日本では残薬(薬を処方されても飲まずにそのままにしておくこと)が社会問題になっており、厚生労働省も改善に向けて動いています。特に認知症の方は、自身での薬の管理が難しく、一日に何の薬を何回飲むかも忘れてしまいます。なるべく少なめに薬を出して、薬剤師が定期的に訪問していただくようにすると効果的です。
また認知症の方は、看護師や保健師をなかなか家に入れたがらないとよく聞きますが、薬剤師が薬を持って行くと、「何か持ってきてくれる人」ということで入れてもらえるケースが多いようです。絶対に人を家に入れない、という認知症の方には、まず薬剤師が定期的に薬を持って訪問するようにして、ある程度のレベルになったら看護師や保健師にバトンタッチして治療につなげていきます。実際、新潟でもこのようなケースで治療を改善した方は少なくありません。いいきっかけ作りになりますね。


初期集中支援チームによるスピーディーな対応

今年の1月から新潟市では認知症の初期集中支援チームが発足しました。新潟市ではモデル事業として2つの病院が取り組んでいます。同様に、長岡市や上越市も導入されている病院があります。

この初期集中支援チームは、医者、看護師、ケースワーカー、作業療法士、介護士、臨床心理士などで構成されています。この中から2名以上が訪問をして、対象者を評価し、チームで会議・検討を重ねます。何回か繰り返し行うことで本人をなんとか説得し、医療と介護に結びつけていきます。大体半年くらい動いて、状況を見ながらケアマネジャーに引き継ぎます。集中的に会議や検討を行っていますから、いろいろな職種の人の意見がサービスにつながっていきますし、連携を密に取ることで、一定の職種に負担が掛かりすぎることなく効率的に、かつ、チームで集中的に動くことで早く治療の軌道に乗せることができます。今後は各地に広げて取り組んでいかなければならないでしょう。そうすることで早期発見でき、認知症の問題解決へつながっていくと思います。



まとめ「認知症は怖くない。早く見つければいいことがいっぱいある」

認知症に対して正しい知識をもっていただきたいです。これだけ問題になっている要因として、認知症の対象となっている世代が知識もないまま年を重ねてきました。皆さんがしっかりと正しい知識を持つことで、7割~8割くらいは解決できるのではないかと考えています。自ら早期発見に努め、デイサービスにも行って、家族の言うことも聞いていけば、大きな問題は起こらないと思います。また、認知症は多職種連携しなければなりません。家族だけで認知症患者を見守ることが難しい時代になってきていますから、地域でどう見守っていくのか、多職種連携においてどう包み込んであげるのかが必要です。

多職種連携はこの数年間で急速に発展し、連携も広がって、ネットワーク力が強くなってきました。この先もスピードを上げて強化されていくと思います。「ちょっとおかしいな」と思ったら、自ら積極的に向き合い、治療をスタートしましょう。

みんなのコメント

0

この記事に関するみなさんのご意見をお寄せください。
なお、投稿されたコメントは管理者の承認の後に掲載されます。 悪意ある投稿・誹謗中傷、営業目的などのコメントの掲載は 承認されないことがございますので予めご了承ください。

新しいコメントを投稿する

お名前
タイトル
コメント
1000文字以内で入力してください。
認証

投稿されたコメント 0

コメントはありません

関連キーワード