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訪問歯科診療の実際

[第9回]

日本歯科大学新潟病院訪問歯科口腔ケア科 歯科医師 赤泊圭太先生

2016年8月1日

歯科診療の理想は「一生涯のお付き合い」

 かかりつけ歯科医院がある方はよくご存じだと思いますが、定期的に歯周病や入れ歯のメインテナンスを行うことでお口の健康を維持することができます。   

ところが、何らかの原因で歯科への通院ができなくなった場合、その患者さんのお口の中はどうなるでしょうか。特に、認知症の方の場合、それまで自分でできていた歯磨きや入れ歯の管理もできなくなってしまい、急激にお口の環境が悪化し、様々なトラブルを生じます。

お口のメインテナンスは、一生涯続けることが理想的です。そのためには、定期的な歯科受診が困難となった場合でも、訪問診療を行うことでお口のケアと歯科治療を継続して受けることができます。

 訪問歯科診療は、病気やケガによって歯科医院への通院が困難となった方を対象としています。訪問診療を必要とされている方には、さまざまな入り口が用意されています。かかりつけ歯科医院がある方は、まずはその先生にご相談してみてください。歯科医院の中には訪問診療を行っていない医院もありますので、その場合は、県歯科医師会基幹連携室や地域の在宅歯科医療連携室にお問い合わせください。また、現在口の中に異常を感じていない場合でも、新潟県と新潟県歯科医師会では、在宅で受けることができる無料の訪問歯科健診を行っています。このような健診を受けて、必要があれば、訪問歯科診療、訪問口腔ケアを開始するという方法もあります。

訪問歯科受診を始める入り口

かかりつけ歯科医院へご相談

ケアマネージャーから紹介

在宅歯科医療連携室への問い合わせ

 ※新発田市、新潟市、燕市・弥彦村、長岡市・出雲崎町、十日町市・津南町、上越市・妙高市・糸魚川市、佐渡市地域にお住まいの方は各地域の在宅歯科医療連携室へ、その他の地域にお住まいの方は基幹連携室へお問い合わせください。(詳しくは新潟県歯科医師会のホームページを参照)

無料歯科健診事業の申し込み、お問い合わせはお住まいの県地域振興局健康福祉(環境)部へ

 認知症が進行するとご本人との意思疎通が難しくなります。介護者の方には以下の様な兆候が見られた時にはご相談ください。

訪問歯科を受診すべき兆候

①食が細くなった

②食事時間が長くなった

③以前のように歯磨きができなくなった

④義歯を入れたがらない、あるいは気がつくと義歯を外している

⑤口臭がきつくなった

 特に①と②については、全身の病気が原因のこともありますが、口腔内や飲み込みの機能に問題が生じている場合もあるため、注意が必要です。「病気かな?」と疑うのと同時に「口の中は大丈夫かな?」と考えてみてください。



訪問診療の実際

 お問い合わせをいただいて訪問日が確定すると、患者さんのところへ伺います。訪問診療の内容は医院が持っている設備によって多少異なりますが、一般的な訪問歯科診療の実際についてお話します。

 訪問時は車に診療用の器具機材を積んで行きます。レントゲン撮影車のような車と設備を持って車内で診療すると勘違いされる方もおられますが、医療保険における「訪問診療」とは患者さんの居住する建物の屋内で行うものとされており、機材を持ってお家の中に伺います。

 当日の体調を確認してから診療を開始します。1回の診療時間は30分から長くとも1時間以内。特にご高齢の方、体の不自由な方、認知症を患っている方は、長時間の診療は大きな負担になるため、時間のかかる治療では一回の診療時間を短くし、訪問回数を増やして対応しています。

 入れ歯の調整・修理、むし歯や歯周病の治療、抜歯を含む外科的治療も行います。特に外科的治療は他の疾患や患者さんの体調なども絡んでくるので、医科主治医との連携が必要になってきます。また、お体の病気や認知症のかなり進行した状態では、訪問先での治療行為自体が難しいケースもあり、そのような場合は必要な設備、環境の整った病院に来て頂いて、十分な全身管理の下、安全に治療を行い、病状によっては入院下で経過をみます。


できれば進行する前に

 繰り返しになりますが、口腔ケアは、生涯続けていくことが大切です。誤嚥性肺炎や糖尿病など、お口の健康と体の健康は密接に関わっており、お口の健康を守ることは全身的な病気の予防にも繋がっていきます。そのためには、日常的な口腔ケアを十分に行う必要があり、歯科通院が困難な方であっても、それは同じです。

 我々の患者さんのうち6割の方は認知症を患っています。先ほど、認知症が進行しているケースでは、全身管理下で治療を行うこともあるといいましたが、進行すると自分が何をされているのか認識ができなくなり、治療自体も困難となり、ご本人の不安感や負担も非常に大きい。ですから治療できるものは認知症になる前、なっても初期の段階で治療していただきたい。それにより、認知症が進行してから大変な思いをして治療を受けなくても済み、口腔ケアも楽に行うことができます。

 在宅で療養している認知症の患者さんはたくさんおられます。我々は、訪問歯科診療および訪問口腔ケアを通して、患者さんのお口の健康を守り、ご家族も含め、安心で快適な日常を過ごせるようお手伝いをさせていただきます。

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