医療・介護・健康領域の専門家によるウェルネス応援サイト【新潟日報|ささえ〜る

「オレンジの輪」おとなプラスシリーズⅠ(第2土曜日) 認知症・思いやりのケア

もの盗られ妄想への対処 気にせず受け流す姿勢で

2017年10月17日

おとなプラスシリーズⅠ

新潟・認知症啓発キャンペーン

認知症・思いやりのケア③


もの盗られ妄想への対処

気にせず受け流す姿勢で


 認知症の症状は中核症状と、行動・心理症状の二つに分けられます。中核症状は脳細胞が壊れることから来る症状で、記憶障害、見当識障害(時間・場所・人が分からなくなる)、実行機能障害(物事を計画し、段取りすることが難しくなる)などがあります。残念ながら認知症の全ての人に出る症状で、現代医学では治療に限界があります。

 一方、行動・心理症状は、全ての人に現れるとは限りません。妄想(事実でないことを信じ込む)、幻覚(実際にはないものが見えたり、聞こえたりする)、暴言・暴力、徘徊(はいかい)などの症状です。これらは周囲の対応によって軽減できることがあります。

 認知症の初期から中期にかけて最も多くみられる行動・心理症状が、「もの盗られ妄想」です。これは大事なものをしまいながらどこに置いたかを忘れてしまい、「誰かに盗られた!」と思い込む妄想です。大事な通帳や財布をきちんとしまおうとする気持ちが裏目に出てしまうのです。

 直接的な原因は記憶障害で置いた場所を忘れるためですが、もっと深いところに原因が潜んでいます。認知症の人は不安感や焦り、寂しさなど複雑な感情を漠然と抱き、人に弱みをみせないようにちょっとしたことで攻撃的になります。もの盗られ妄想もこの感情が根底にあり、自立してきた自分が忘れるはずないのに…という困惑や自信のなさが現れたと考えられます。

 この妄想の困ったところは、最も身近で世話をしてくれている人に対して妄想が向けられる点です。信頼している人にほど、より強く症状が出るのです。献身的に世話をしているのに、「あんたが盗ったんだろう」と言われると、介護者はショックを受けモチベーションが非常に下がります。

 どんな対処方法があるでしょうか。否定や反論はいっそう妄想を強めるため逆効果。なくなったものを一緒に探す。自分が見つけると隠していたのを出したと疑われるので、わざと見つかる場所に置き、本人が見つけるよう仕向けるとよい―などと言われることが多いのですが、そううまくはいかないのが現実です。

 この妄想はずっと続くわけではないので、あまり気にせず受け流す姿勢が大事です。もの盗られ妄想が出る時期は限られ、その時期を抜けると、妄想もなくなっていきます。穏やかな対応を心掛けましょう。疑われた介護者が疲弊しないよう周囲の人に理解してもらうことも大切です。

 また、認知症カフェやデイサービスなどで本人に気分転換してもらうことも重要です。他の人との交流で気分も明るくなり、もの盗られ妄想が改善することもよくあります。

 なお、もの盗られ妄想があまりひどく出るようなら、少量の薬剤で改善する場合もありますので、専門医への相談をお薦めします。





みんなのコメント

0

この記事に関するみなさんのご意見をお寄せください。
なお、投稿されたコメントは管理者の承認の後に掲載されます。 悪意ある投稿・誹謗中傷、営業目的などのコメントの掲載は 承認されないことがございますので予めご了承ください。

新しいコメントを投稿する

お名前
タイトル
コメント
1000文字以内で入力してください。
認証

投稿されたコメント 0

コメントはありません