おとなプラスシリーズⅡ
認知症・ともに歩こう⑨
作業通じて達成感を
「笑う」「楽しむ」大切に
手際よく足台を作る利用者(左)と、作業を見守る作業療法士の中川美和さん=新潟市北区のデイサービスセンターはやどおり
80代男性が大ぶりのカッターナイフを使い、発泡スチロールを慣れた手つきで切り分ける。それを空の牛乳パックの中に入れたものをいくつも作り、座った姿勢を保つ「足台」に仕上げていく。認知症に対応する新潟市北区のデイサービスセンターはやどおり(医療法人愛広会)でのリハビリのひとこまだ。
作業療法士の中川美和さん(29)は、会話はしながらも補助せずに見守る。「作業を通じて、やりがいや達成感を持ってほしい」。中川さんの思いに応えるように「この仕事を家でもやるようになったよ」と男性は話す。出来上がった足台は、施設内で多くの利用者に使われている。
同センターの利用者は1日約30人。約60人が登録しており、約8割が認知症の診断を受けている。同センターには作業療法士が2人、看護師4人、介護士11人が勤務する。認知症ケア専門士2人、認知症介護実践者研修修了者が4人おり、認知症に対応できる態勢を整えている。
リハビリでは、「笑う・楽しむ」が一番重要なポイントだという。工作をはじめ、手芸、外出など、1人1人の状態や好みに合った活動を作業療法士と介護士が提案。体の機能維持や、認知症の進行緩和を図る。
中川さんは週1回、新潟リハビリテーション病院(新潟市北区)の「もの忘れ外来」で勤務する。同病院と同センターの両方に通う利用者が多いため、日々の様子に変調があれば、服薬調整などができる医療との連携態勢を整えている。
家族との連携も欠かせない。送迎時に情報交換はするが、じっくり話す機会を持ちたいという思いから、家族と懇談する「はやどおりカフェ」を今月始めた。「その人が本当にしたいことを、リハビリや関わりの中で提供していきたい」と中川さんは話す。
認知症の男性(93)は、パソコンを操り献立表を作成するのが日課。同センターに通うことで生活にリズムが生まれたという。「最初は車いす生活だったが、今は歩けるようになった。いろんな人と会えて、ここはいいところだよ」と充実感をにじませていた。
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