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新潟市『南区保健医療福祉のつながりを深める学習会』の取組み

[第6回]

~第11回 在宅医療推進のための多職種連携研修会をレポートします~

2016年4月15日

~第11回 在宅医療推進のための多職種連携研修会をレポートいたします~


平成28年2月20日、新潟市南区に於いて90名を超える参加者と共に、『南区保健医療福祉のつながりを深める学習会』(略称「深める会」)が開催されました。厚生労働省は盛んに地域包括ケアシステムの構築を進めていますが、地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるために、「医療・介護・住まい・生活支援・介護予防」のサービスが日常生活圏域30分で提供できるシステムをいいます。

 深める会の会長であり、県医師会副会長の吉沢浩志先生から「地域包括ケアシステムは医療・福祉・介護の多職種連携が不可欠であり、初めての取り組みに多くの地域が実現に苦心しているところですが、南区は様々な専門職による連携を早くから実践している地区です。2025年に向けた取り組みに、皆さんと一緒に立ち向かっていく時期であり、この研修会を通して、私たちが暮らすこの地域に何が求められ、何が必要なのか、何が足りないかを話し合っていきたいと思います」と挨拶があり、研修会がスタートしました。


1.「深める会」は、多職種連携のための組織づくりのモデルケース

第一部は、新潟医療福祉大学 社会福祉学部社会福祉学科 青木茂准教授を講師に迎え、『南区支え合いの仕組み作り会議(協議体)と地域ケア会議 ~それぞれの機能と役割を考える~』と題した基調講演が行われました。まず高齢化社会の現状として、2025年には認知症患者が65歳以上の5人に1人、総数にして約700万人を突破すると想定されていること。2014年に成立した医療・介護総合確保推進法では、将来的に不足する施設や介護職員の確保を目的に、要支援1.2は介護保険の給付から切り離して市町村にゆだね、特養ホームは、要介護3以上でなければ利用できなくなったこと。そのために今後必要なのは、住民を含めた地域の仕組み作り「地域包括ケアシステム」であり、その構築を目指して〈地域ケア会議〉に加え、新たに〈協議体〉が組織されたことを話されました。



施設や介護職員の不足により、このままでは10年後に47万人の方が看取りする場所がなくなるというデータもあることから、「これからは自助・互助の果たす役割が大きく、地域の住民の力を必要としながら、高齢者の生活支援・介護予防を担っていかなければならない」と青木氏は強調します。〈地域の互助を目指す協議体〉は市と区の多層で構成し、区には生活支援コーディネーターが配置されているのが特徴で、〈社会基盤の整備を目指す地域ケア会議〉との連携を図る重要な役割を担っていくといいます。

〈協議会〉がうまく機能するかどうかについて、不安を抱えている地域も多い中で、南区は「南区保健医療福祉のつながりを深める会」が組織され積極的な活動がすでに始まっています。地域包括ケアシステムの全体像の半分は完成されていると考えられ、民生委員も参加していることから、これから組織づくりを始める他区域のモデルとなるのではないかと、期待しているということで講演は終了しました。



2.大切なのは、地域の人間関係が持続する視点

第二部は、『住み慣れた南区で生活を継続するために、南区の強みは、弱みは何か』~南区で地域包括ケアシステムを構築していくために~、をテーマに参加者が日常の業務で感じたり考えたりしていることを通して、南区の強みを生かしたより良い支援を考えるためのワークショップが行われました。

前半は、1グループ6~7人で構成された14のチームごとに「大腿骨骨折で入院した、一人暮らしの元農家の84歳女性の退院後」を想定して支援内容を考えるのですが、様々な職種、学生、立場や仕事、初参加あるいはベテランが揃うメンバーが、日々の自分の仕事を振り返りながら、あるいは知識を生かして活発に発言していました。後半は、出来上がった支援内容について、南区に存在するかあるいは存在しないが必要とするかを精査していきます。これを明確にすることで見えてきたのは、南区では、施設や人など資源が整っていること、横のつながりが強く情報が入りやすいので仕事がしやすいことが強みの反面、24時間体制の訪問介護は必要なのに存在しない等、具体的な課題が見えてきました。


代表チームによる発表では、事例の女性が元専業農家で入院前も敷地内で野菜を作っているという点に注目して、認知症や運動能力低下を予防するために、好きな家庭菜園を続けさせることや、自宅に居続けたいという希望を叶えるためにも自宅の一室を開放し、近所の人が集まる場所の提供を提案するなど、個人の考えや生き方を尊重したアイデアに共感が集まりました。また、居室にセンサーを設置し一定時間反応しない場合は、予め登録していた近隣あるいは親族の協力者、民生委員やケアマネージャーが駆けつけるシステムを実施している長岡市や、了解を得た上で、徘徊に備えて近所にチラシなどで情報を知らせている地区の取り組みが紹介される等、互助の実例が紹介される場面もありました。

 青木准教授の講評では、南区の連携の強さが現われて対象者を尊重した支援が考えられている点が印象に残り、今後はさらに地域の人間関係が持続する視点を大切にしてほしいということ、また、国が推進してきた予防が市町村に戻された今、さらに予防に力を入れた支援が必要なことを強調すると共に、今日の熱心な論議によって生まれた「南区の24時間体制の支援」という課題は地域ケア会議で図ると約束され、3時間に渡る学習会は終了しました。





まとめ

ソーシャルワーカーを目指し勉強中の新潟青陵大学の女子学生は2回目の参加で、自身が力を入れている在宅医療について掘り下げて勉強できたことを喜んでいました。特に、資産・財産管理も支援のひとつと知り、現場で働く専門職の方々と一緒に考える機会は貴重だと言います。また、初めて参加した民生委員児童委員の方は、どんな時にどんなサービスがあるかを知ったことで、地域に帰って生かしたいと、強く感じたそうです。過去の学習会でファシリテーターの経験がある保健師の方は、南区の現状を知る良い機会であり、今後も参加したいと思うとともに、これだけの規模の研修会の運営進行を成功させた実行委員の準備の良さに感謝していました。


基調講演では、「南区支え合いの仕組み作り会議(協議体)」と「地域ケア会議」、二つの同じような組織を新たに作る必要はあるのか、多くの人が漠然と感じていた疑問をはっきり示してくれた上で、それぞれの機能と役割を具体的に伝えたことで、専門職の方々にも気づきがあったようです。グループワークで完成した各チームの支援内容は、自助・互助・公助と共助(社会保険制度)のバランスがとれると良い支援になることを示していました。今回の取材で印象に残ったのは、仕事の傍ら、100人近い異業種連携の会を準備する実行委員会と、参加者の熱意です。「誰もが住み慣れた地域で、安心して最後まで自分らしく暮らす」という目的を全員で共有し、団結している様子が伝わりました。南区の取り組みが他の地区・地域の刺激になるよう、多くの方に知って頂けたらと思います。

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