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生涯を通して女性の健康管理を考える「女性医学」

[第4回]

新潟市民病院 患者総合支援センター(スワンプラザ)センター長 産科・婦人科部長 医学博士 倉林 工 先生

2016年3月15日

女性医学 Women’s Healthcare Medicine は「産婦人科の専門領域のひとつで、QOL(Quality of Life)の維持・向上のために、女性に特有な心身にまつわる疾患を主として予防医学の観点から取り扱うことを目的とする」と定義されています。


生活習慣病のリスクの改善に繋がる「女性医学」

世界的にも高齢化率が高くなっていますが、日本は最も平均寿命の高い長寿の国として知られ、男性は80.50歳、女性は86.83歳(2014年)となり、100年前に比べ2倍近く生きられるようになりました。しかしながら身体そのものに大きく変化があったわけではなく、今回の話のポイントとなる女性の更年期については、初経から閉経までの期間に変化が見られません。つまり、非生殖期と呼ぶ更年期後の人生が長くなったということです。閉経を境に、女性の身体は変化し特有の疾患が起こりやすくなるのですが、その原因を探り早くから予防すれば、長い人生を自立した状態で生活できると考えているのが「女性医学」の一つです。これまでの臓器別・疾患別の対処ではなく、乳幼児期から小児・思春期、妊娠出産を経て更年期、その後の老年期まで、女性の生涯を通じて産婦人科が関わる有効性を広く知ってほしいと思います。


更年期は、自分の身体を知るターニングポイント

閉経とは、卵巣機能が働かなくなり月経が以後停止することで、更年期は、閉経をはさんだ10年間、大体45~55歳位です。「女性を卒業する時」「いらいら・ほてり・のぼせ・不眠の女性」「人生の黄昏」など暗いイメージを持ってしまいがちですが、平均寿命からみると、閉経後30年以上の生活が控えています。よって、更年期は、自分の身体を知り、健康に暮らすために、自身の生活を見つめ直す機会として捉えてはいかがでしょうか。
更年期には、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少するため「更年期症状」が現われます。日常生活を送れないほどの症状を「更年期障害」と言います。症状の現れ方は人それぞれ、しかも誰もが更年期障害になるわけではありません。最近では、若い時のケアによって更年期障害や、その後の疾病リスクを軽減できることもわかってきました。
更年期障害は、のぼせ・ほてり・発汗などの血管運動神経症状と、不眠・不安・気力減退・抑うつなどの精神神経症状が特徴ですが、原因は「女性ホルモンの低下」だけではありません。年齢的に、仕事を持つ女性であれば責任のある立場の人も多く、家庭では子どもの進学就職問題や親の介護などの「社会・文化的」な要素も影響します。さらに几帳面で真面目・内向的などの「心理・性格的」な要素が絡み合って、症状に現われます。そのために更年期障害の治療は、あらゆる側面から見た上で、内科・心療内科・神経内科・精神科など他科との連携が欠かせません。



ホルモン補充療法には治療と予防、2つの目的があります

更年期障害の治療は、極端に精神的な症状があれば心療内科での治療と並行して行いますが、血管運動神経症状は、ホルモン補充療法といってエストロゲンを投与する方法があります。特に、ほてり・のぼせなどの更年期障害の改善のみでなく、骨粗しょう症治療や膣・外陰部の痛み・かゆみなどの泌尿生殖器系の症状に改善がみられます。ホルモン補充療法は、子宮がある方は、エストロゲンと黄体ホルモンであるプロゲスト―ゲンを、閉経前は周期的に、閉経後は連続的に投与します。子宮がない方は、エストロゲンのみというような基準があります。また、肝臓への負担による血栓が心配な場合は、エストロゲンの塗り薬や貼り薬もあります。乳がんの心配な方には漢方薬などもありますので、産婦人科医の詳しい診断を受けていただければと思います。
ホルモン補充療法による、将来起こりうる骨粗しょう症の軽減も報告されています。患者さんには、治療に加え、予防にもなることを伝え、医師と患者さんの間で目的を共有して向き合っていくことが大切です。


低用量経口避妊薬(ピル)使用による生理痛の軽減

ホルモン剤は、更年期に限らず若い女性にも効果的に使用します。低用量経口避妊薬(ピル)がその一つです。避妊効果として広く知られていますが、服用することで、生理痛や月経不順が改善される他、多毛症やニキビ、定期健診による卵巣がん・子宮頸がんの早期発見、骨盤内感染症の減少など、女性の身体特有の疾病に効用があり、日常生活を有意義に過ごすことが可能です。過去に血栓症による死亡という重大な副作用があったことに応え、現在では日本産科婦人学会によるガイドラインを発行し、服用を示すカードの保持を徹底するなど、リスクを回避できる対応が整備されています。多くの効用があるホルモン補充療法や経口避妊薬(ピル)を正しく知らせるのが私たちの役割です。
冒頭にもお伝えしましたが、更年期を暗いイメージで捉えず、更年期をきっかけに自分の健康を見つめ直すことが大切です。多くの人は子どもたちが成長し、夫婦ふたりの生活になる年齢でもあり、仲良く暮らしていくためにも健康診断を受けるなどして、お互いの健康を考える機会にしてもらえたらと思います。世の中の女性には、日常生活を良くするという意味で、月経が始まった頃から「女性医学」について知ってほしいと思います。

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