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骨粗しょう症と女性医学

[第5回]

新潟市民病院 患者総合支援センター(スワンプラザ)センター長 産科・婦人科部長 医学博士 倉林 工 先生

2016年4月15日

骨粗しょう症は、骨折しやすくなった状態をいいます

昔は骨折すると骨粗しょう症と診断されましたが、現在は「骨強度が低下して骨折しやすくなった状態」と考えられ、骨折する前でも診断されます。この骨強度は、骨密度(こつみつど)と骨質(こつしつ)によって決まります。骨密度は骨に含まれるカルシウムの量で測定器を使って簡単に測ることができますが、骨質は骨の柱を構成する鉄筋のようなもので正確な評価が難しいと考えられます。また、加齢によって腰が曲がるのは、脊椎骨折が始まった状態です。2㎝以上の身長低下は、椎体骨折を起こしている可能性が高いと考えられています。

骨粗しょう症による腰椎や大腿骨の骨折は、70~90歳では女性が男性の3~4倍にもなります。現在は良い薬も開発されていますが、高齢者の増加と共に骨折が増えているのが現状です。骨折がなぜ問題視されているかというと、骨折が起因となり、寝たきりや肺炎・内臓疾患などを起こし、死亡リスクが高くなる点にあります。整形外科の先生は、骨折を起こした患者さんに早めにプレートを入れるなどの治療を施し、少しでも早く歩いてもらうようにして寝たきりになるのを防いでいます。


骨代謝による骨強度の減少

皮膚と同じように、骨も新陳代謝を繰り返しています。骨のリモデリング(再構築)といって、古い骨を壊し、新しい骨を作るサイクルを繰り返しながら、しなやかさや強さを保っているのですが、閉経後から急激に壊す方が盛んとなり、バランスが悪くなります。閉経前後には、自分の骨密度を知っておくことも大切で、是非一度、検査をお勧めしています。検査方法には、定量的超音波測定法(QUS)、X線フィルムによるDIP法、より高精度の解析が可能な二重エネルギーX線吸収法(DXA法)などがあります。

幸いなことに、県内の整形外科はDXA法測定装置の普及率が高く、希望すれば簡単に検査が受けられる環境にあります。婦人科やかかりつけ医になくても、DXA法測定装置がある施設との連携ができているので気軽に相談してみるのもいいでしょう。年齢に関わらず自分の骨密度を知ることは、現在の状況あるいは将来的に起こりうる骨粗しょう症のリスクの軽減にも繋がります。



18歳~20歳頃の最大骨量を、
いかに増やすかを考えるのが女性医学の一つの視点

骨粗しょう症というと、更年期から老年期以降の問題と思っている方が多いかもしれません。女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量を生涯に渡って相対的にグラフ化すると、骨密度の増減と同様な曲線が描かれます。エストロゲンは、骨量の獲得と喪失に密接に関係しているため、閉経後は骨密度が低下します。女性医学的には、骨密度が最大値に向かって増える18~20歳の頃に、十分な骨量を獲得することで、閉経後の骨粗鬆症を軽減できる可能性があると考えられます。

20歳前後に自分の骨量を知り、足りなければ食事と運動で増やすことも重要です。この時期にいかに骨量を増やすかが重要であり、リスクの高い女性には若いうちの検査をおすすめしているのはそのため。特に月経不順、BMI診断(体重(kg)÷[身長(m)]2)で18.5未満の「痩せ」の方、ダイエットの経験がある方などは、ホルモンバランスが崩れている可能性が考えられるため、骨粗しょう症の家族歴のある方とともに、骨粗しょう症が起こるリスクが高いと考えられています。また、ステロイドなど薬の服用や合併症も原因となる場合があります。これら骨粗しょう症の因子に早く気づいて若い時からサポートしていくことが女性医学の考え方です。
女性の皆さん自身が骨量の大切さを知り、怪我や痛みで整形外科の治療を受けた時や、健診を受けた時に、ひと言医師や看護師に「骨量の検査」を相談して頂ければと思います。



多くの組織が連携する骨粗鬆症ネットワーク

骨粗しょう症は、多くの方に起り得る疾病であり、早めに治療を行うことで、招来起こり得る骨折による寝たきり状態を防ぐことに繋がります。治療率向上と、治療継続率を高めるために「骨粗鬆症ネットワーク」という地域社会・病院・診療所間のネットワークが生まれています。
新潟市医師会では、骨粗鬆症連携委員会が活動を始めています。医師会内の整形外科・内科・産婦人科からなる専門委員会を発足し、病院で診療し継続して治療を行うために、通いやすいクリニックを紹介する、あるいは、DXA法など骨密度検査設備を持つ施設の確認、ホームページへの紹介、合同研修会などを企画・開催しています。


若いうちから正しい食事・運動を心がけることが大切です

女性のライフステージを考えると、更年期を境に、女性ホルモンであるエストロゲンの減少が始まり、様々な疾病リスクが高まります。骨粗しょう症は、骨折してから治療を始めることが多いのが現状ですが、できれば若いうちからカルシウム摂取に気をつけた正しい食事、運動を心がけることが大切です。将来、寝たきりにならないためにと言っても、まだピンとこないかもしれませんが、妊娠・出産の事はイメージできるかもしれません。妊娠・授乳により骨量が一時的に減少しても、授乳が終了し月経が回復する頃には妊娠前と同じあるいはそれ以上の骨量に回復することがわかってきました。また、骨量の少ない痩せた母親から生まれた赤ちゃんや成長したこどもの骨量も少ない可能性が言われています。

検査や健診は、食事や生活習慣の指導の機会にもなるので、若い頃から定期的に産婦人科に受診してもらえると、骨粗しょう症も含めた高齢によるリスクを軽減できると考えられます。妊娠・出産や何かあった時だけではなく、女性のライフステージすべての期間に関わり、女性の健康を様々な面から見て診断・治療できるのが産婦人科の役割。「自分の健康状態が心配」「なんとなく調子が悪い」など、どこに行っていいかわからないような時は、まず産婦人科の利用を選択肢に入れてほしいと思います。

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