医療・介護・健康領域の専門家によるウェルネス応援サイト【新潟日報|ささえ〜る

子どもを守るための正しい予防接種の知識を

[第2回]

医療法人 ささがわ小児科クリニック 笹川 富士雄 院長・理事長

2015年12月15日

『任意接種』と『定期接種』は、同じように受けてほしい予防接種

日本の予防接種は、無料の定期予防接種と有料の任意予防接種に分けられています。「任意」予防接種はその名前のせいか、心配なら受けてください、受けなくても構いません、というような消極的な意味で捉えている方もいらっしゃるかもしれませんが、違います。お子さんにとっては定期、任意にかかわらず、すべてが大切な予防接種であることを知っていただきたいと思います。

皆さんはVPDと言う言葉をご存じですか? Vaccine Preventable Diseaseの略で、ワクチンで予防できる病気のことです。定期、任意に関係なく、受けられる予防接種はすべて受けて、病気から守ろうという考え方からできた言葉です。例えば、ヒブ、肺炎球菌感染症は、生後2カ月から罹ります。脳に重い後遺症を残したり、最悪の場合は死に至る怖い病気です。ワクチンを受けることで、敗血症や髄膜炎のような重症の細菌感染症を90%予防できると言われています。このワクチンは、平成23年1月に定期接種になり、そのおかげで、ヒブによる髄膜炎はこの2年間ほど新潟県では出ていません。麻しんは今でも恐ろしい病気で、現代の最新医学を施しても助けられない命もあります。現在は麻しん風しん混合ワクチンの形で定期接種として行われています。定期予防接種として他に、結核を予防するBCG、四種混合(ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ)、日本脳炎、水痘ワクチンなどがあります。任意予防接種としては、ロタウイルス、B型肝炎、おたふく風邪ワクチンなどがあります。春先に流行し、大勢のお子さんが脱水症や痙攣がおさまらずに入院していたロタウイルス感染症は、平成23年11月に任意接種として接種できるようになり、現在では大きな流行がなくなりました。B型肝炎ワクチンは将来の肝臓がんを予防するためのがん予防ワクチンです。500人~1000人に1人難聴を起こすおたふく風邪も予防接種で予防できます。あのとき受けておけばよかったと後悔しなくてもすむようにしっかり受けさせておきたいものです。



2カ月でワクチンデビュー、
1歳でワクチンレビュー

生後6週でロタウイルスワクチン、2カ月でヒブ、小児用肺炎球菌、B型肝炎が受けられるようになりますが、スムーズにワクチン接種を進めるために、2か月になったらできるだけ早い時期にこれら4種類のワクチンを同時に受けさせてあげるのがベストです。「2カ月からワクチンデビュー」です。


2カ月からの予防接種が6~7カ月でいったん落ち着きます。その後は1歳になると新たに接種するワクチンと、これまで接種していたワクチンの追加接種が始まります。「1歳でワクチンレビュー」という言葉が最近聞かれるようになってきました。受けていないものはないか、これから受けるべきものは何かなど、1歳になったらなるべく早くワクチン接種を再検討してください。1歳の誕生日の一番の贈り物はワクチンですよ。


今では多くの予防接種があり、これらを短期間に受けさせることに、お子さんの体の面だけでなく保護者のスケジュールの面からも不安に思っている方もいらっしゃると思います。でも現在は、「同時接種」が広く安全に行われるようになりこの悩みも解消されました。


免疫力が早くつけられ、親の負担も軽減する同時接種

腕や足に一度に多くのワクチンを接種するやり方を同時接種と言います。1回に同時に受けられるワクチンの数に制限はありません。同時に接種しても、ワクチン同志はお互いに影響しあわないので、有効性(=効果)と安全性(=副反応)に差はなく、むしろお子さんにとってトータルでは副反応は少なくなり、負担が少ないと言えます。ひとつずつよりも早く免疫がつけられるメリットもあります。また、共働きの多い現代では、予防接種のために仕事を休む回数も少なくて済みます。日本小児科学会では、2カ月で4種類のワクチンを受けた後、3カ月で上記4種類に四種混合を加えて5種類のワクチンを同時接種することを勧めています。医療機関によっては同時接種を行っていないところもありますので、事前に、同時接種が可能な医院を調べておくと良いと思います。

予防接種は、周囲の人への思いやり

昔は、保健所や学校など決まった場所、時間に接種を受ける、集団接種による集団予防の考え方が普通でした。しかし現在では、一人ひとりが子どもの状態を考えてかかりつけ医のところで接種する、個別接種による個別予防の考え方に変わってきました。これは決して悪いことではないのですが、ともすると、病気になっても自分の責任だからと、自分の子どものことだけを考えていればいいと考えがちです。ですが、感染症は周囲を巻き込むものです。最近、お子さんに肺炎球菌ワクチン接種を行ったところ、一緒に暮らしているお年寄りの肺炎が少なくなったという事実がはっきりしてきました。予防接種したくても出来ない免疫不全の子もいます。お年寄りやそういったお子さんを守ってあげるという意味でも、予防接種は大切なもの、感染を拡げないという周囲への思いやりも大切だと思いませんか。


20年ほど前は、日本は予防接種先進国でした。さまざまな社会状況により、一時は世界の趨勢に大きく乗り遅れてしましました。7年ほど前からようやく世界に追いついてきましたが、その間に失われた多くの子どもの命は帰ってきませんし、今でも重い後遺症に苦しんでいるお子さんとその家族もいらっしゃいます。また、予防接種が進みその病気がほとんど見られなくなったために、やめてもよいのではないかと考える人もいるかもしれません。しかし、副作用のために接種を一時的に中止せざるを得なくなった結果、数年後に大流行してしまった百日咳の例もあります。そのようなことを考えると、予防接種をしっかりと継続的にお子さんに受けさせることはとても大切なことだと思います。海外、特にアジア、アフリカなどでは、まだまだ多くの感染症が流行している地域があります。これからのお子さんは広く世界に出て行って活躍してほしいものです。そのためにも、予防接種について正しい知識を持ち、接種できるワクチンはできるだけ受けさせて、大切なお子さんを病気から守ってほしいと心から願っています。

みんなのコメント

0

この記事に関するみなさんのご意見をお寄せください。
なお、投稿されたコメントは管理者の承認の後に掲載されます。 悪意ある投稿・誹謗中傷、営業目的などのコメントの掲載は 承認されないことがございますので予めご了承ください。

新しいコメントを投稿する

お名前
タイトル
コメント
1000文字以内で入力してください。
認証

投稿されたコメント 0

コメントはありません