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医療、介護、生活支援サービスを地域の中で統合する「地域包括ケアシステム」

地域に暮らすすべての住民の参加が決め手

新潟日報

2016年9月13日

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◎県医師会 吉沢浩志副会長 <よしざわ・ひろし> 1947年、白根市(現新潟市南区)生まれ。新潟大医学部卒。81年、医学博士。94年、新大医療技術短期大学部看護学科教授。97年、南区庄瀬に吉沢医院を開院。2010年から現職で、県医師国保組合理事長、県健康づくり財団副理事長。


 医療や介護、生活支援などのサービスを地域の中で統合する「地域包括ケアシステム」。この仕組みづくりに尽力する県医師会の吉沢浩志副会長に、地域包括ケア構築の背景や連携のあり方、地域住民に求められる意識変革などを聞いた。

―地域包括ケアシステム構築が急がれるのはなぜか

 2025年には団塊世代が全員75歳以上の後期高齢者になる。新潟県は65歳以上人口の割合が現在の30.6%から25年は34.3%へ、75歳以上は15.9%から20.2%へ上がる。5人に1人が75歳以上になる予測だ。

 県内に7万人いるとされる認知症の人は、25年には9万2千人になると推計される。限られた人と資源で高齢者の生活の質をどう保つかが大きな課題だ。

 さらには、深刻な看取り問題が控える。25年に後期高齢者に入った団塊世代もいずれ寿命を迎える。国は30年からの10年間で、年間の死亡者がそれ以前より40万人増えて160万人になると見込むが、病院での看取りは限界。これが地域包括ケアシステム構築を推し進める直接の引き金だ。

 県内の現状は病院や診療所で亡くなる人が76.9%で、自宅で亡くなる人が10.9%だが、県の計画では病床数がこの先減っていく。このため県医師会は、居宅等でも安心して最期を迎えられるよう、訪問診療体制などの確立に努めている。

―地域包括ケアとはどんな考え方か

 かつての高齢者医療福祉は、国から提供されるサービスを受けるだけの一方通行で、住み慣れた場所から離されて長期入院、あるいは施設入所という形で、本人の意思は必ずしも尊重されていなかった。

 多くの人は高齢になっても住み慣れた地域を離れたくはない。まして認知症になると、環境の変化で症状が進行してしまうケースも多い。自分が暮らす地域の中で、医療・介護サービスを受けることができ、亡くなるまで安心して暮らせる体制を作ろうというのが、地域包括ケアシステムだ。

 国の研究事業で「地域包括ケア研究会」が地域包括ケアシステムを図式化した「植木鉢」があり、今年少し新しくなった=図参照=。以前の図と比べると、個人の生活を支える地域包括ケアシステムの構成要素と関連性をイメージしやすい。

 まず一番下に植木鉢を受ける「皿」。これが「本人・家族の選択と心構え」から「本人の選択と本人・家族の心構え」に変わった。身体の自由がきかなくなってケアが必要になったとき、あるいは認知症になったとき、その後の人生をどう送りたいか。家族ではなく自分自身が決めると明確にした。個人の尊厳を尊重すると同時に、自らの意思による選択と覚悟を求めたといえる。

 次の「植木鉢」は住まいと住まい方で変更なし。これは自宅以外の地域にも、尊厳とプライバシーをきちんと守られる選択肢が用意されることを示す。

 鉢の中の「土」は「生活支援・福祉サービス」から「介護予防・生活支援」に変わった。専門職のかかわりを受けながらも、健康寿命を延ばすため本人が努力する自助と、NPOやボランティア、民間事業者など多様な主体による支援体制への移行を示した。

 最後の「葉」は医療・看護、介護・リハビリテーション、保険・福祉。ここは専門職によるサービス提供を表現した。貧困や孤立など複雑な課題への対応として、保健・福祉を重要な要素として改めて強調した意味は大きい。

―地域住民にはどんな意識が必要か

 地域包括ケアシステムとは、住民自身による地域づくりそのものと言える。認知症の人への対応について考えると、徘徊できないよう閉じ込めるケアと、徘徊しても地域の人が見守るケアのどちらが良いかといえば後者だろう。この時見守るのはその地域に暮らすすべての住民だ。

 認知症に関して先進的な敦賀市は、その一つとして小学生を対象に認知症への理解を広める教育をしている。すると子どもたちの祖父母に対する接し方が変わり、それを見て大人の考え方にも変化が生まれた。

 認知症の人を見守ることのできる地域社会は、お年寄りだけでなくあらゆる人が暮らしやすい。働き盛りの人が介護離職せず、安心して働ける。健康維持に主体的に取り組むのも、認知症の人にどう接するか研修するのも、みんなが暮らしやすいようにするため。社会を構成するあらゆる人が、考え行動するプレーヤーになる。これらすべてが地域包括ケアを完成させるための取り組みであり、地域づくりなのだ。

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